患者・家族メンタル支援学会 第5回学術総会

The 4th Annual Meeting of Society of Mental Support for Patient and Family (SMSPF)

ご挨拶

 2010年、日本は超高齢社会(65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている社会)に突入し、それから10年近くが経過しようとしています。医療技術は年々進歩し、医薬品においては、がんゲノム医療に代表されるように個別化医療の時代になり、医療機器においても、ロボットを用いた内視鏡手術やカテーテル治療等、高齢者が「低侵襲」で受けることができる医療の開発、実用化が進んでいます。しかし、医療技術がいかに進歩しようとも、ひとのこころのありようは、大きくは変わりません。健康への願いと現実とのギャップに悩んだり、病を通じて生きることの意味を見出したりしながら、わたしたちは、こころとからだの折り合いをつけようとしています。

 本学会は、病苦を抱える患者と家族の心を支える医療に関する知識と技術を向上させ、医療機関ならびに地域における診療とケアの一層の向上を目指すことを目的として活動しています。第5回学術総会では、「有害事象発生時の情報開示と対話」をテーマとして選びました。高度医療や個別化医療の発達は、今まで治療ができなかった方に治療選択肢を届けることを可能にしました。しかし、期待が大きく膨らむほど、医療に伴う有害事象発生時の悲嘆は大きくなります。医療技術だけを発展させても、こころのケアがそれに伴わなければ、医療を受ける人々のニーズに沿うことはできません。

 第5回学術総会では、医師、看護師、薬剤師、臨床心理士などの医療従事者に加え、ソーシャルワーカーや法律専門家など、人々の健康や人生に関わる多職種が集ります。医療を受けたが、有害事象あるいは望まなかった結果になった際に、その辛い状況を患者や医療者らがどのように乗り越えていったらよいのか、という視点で議論できればと思います。第5回は京都の地で開催します。会場から近いところには、「哲学の道」もあります。こころの問題を深く考えてきた哲学者も多く輩出されたこの京都の地で、2日間、一緒に楽しみましょう。

患者・家族メンタル支援学会第5回学術総会
総会長 松村 由美